



身に纏うのは、衣だけじゃない。
弁天が紡ぐのは、飾らない日を飾るあなた。
襟元のほんのわずかな彩りが、
帯留のほんのちいさな煌めきが、
あなたの日常を、変えていく。
特別な理由なんて、
なくてもいい。
現代を生きるあなたに、
古風で新しい美しさを。



ある日、羽衣を拾った。
透けるような美しい織りに見惚れていると、
ぐんぐんと羽衣が天に向かって伸びていく。
やがてそれは道となり、雲のはるか上にたどり着いた。
ここは、誰もが自由を楽しむ天の国。
好きな色を纏い、好きな柄をあしらい、
誰もが自由を着て、歩いている。





光を織り込んだかのような、
まばゆく輝く衣を纏った、美しい天女が立っていた。
琵琶を片手にほほえむ天女に導かれ、
たどり着いたのは一軒の館。
そこには、色とりどりの自由が並んでいた。
天女は言う。
「お好きなものを選びなさい。そなたの心のままに」




心のままに。
一際目を惹くひとつの羽織は、
どこか、小さい頃大好きだった宝物に似ていた。
そっと羽織に手に触れた瞬間、
やさしい光に包まれ、思わず目を閉じる。

目を開けると、鏡の中のわたしが、
綻んだ顔でこちらを見ていた。
手には煌めく織物が握られていた。
軽やかに、たおやかに。
かすかな余韻は、
日常に小さな輝きをもたらす。





